mustの意味には、推量を表すものがあると翻訳家さんが教えてくれました。
そもそも推量って日本語があんまりしっくりこないなあ…なんて思ってました。
翻訳家さんがゆっくり教えてくれたら、うっすら理解できました。
きっとあっさり理解できてしまう人も多いはずです。
じっくり読んでみてください。
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「英語の○○って…」的な質問に翻訳家さんが答えてくれました
mustの意味 推量はもう一つの顔
「~しなければいけない」という義務とか必要の意味が、助動詞must のメジャーな意味でしょうが、実は must は強い推量を表すことがあるのです。
この「強い」が曲者で、どういう強さかというと、「証拠などに基づく話し手の強い確信を表す」ということです。
ややこしい感じがするかもしれませんが、言われてみればとてもシンプルな話です。
具体的な例を挙げていきましょう。
例えば、
雨が降ってる
これはいいですよね。
それがですね、こんなことがあったらどうでしょう?
さて、そろそろ帰ろうかなとした時、次のお客さんが、ずぶ濡れになって入口から入ってきて、「いやあ~、まいったな」とか言っています。
もう間違いなく「雨が降ってるに違いない」ですよね。
そんな時には、
雨が降ってるに違いない
と言えるわけです。
上の「ずぶ濡れになって」という状況が「確たる証拠」で、話し手であるあなたは、それを見て「強い確信」を持ったわけです。
不思議ですね、「雨が降ってなければならない」が、その瞬間、「雨が降ってるに違いない」ということになるわけです。
微妙な意味のゆらぎ
この「なければならない」と「に違いない」の線引、ゆらぎは、微妙です。
もう一つの例を見てみましょう。
何かに驚いて、
ご冗談でしょ!
と言ったとしますと、あなたはその発言が冗談だと思うだけの確信があるはずです。
あるいはまた、こんなことを言える場面もあるでしょう。
長旅で、あなたはさぞ疲れてるはずだ
たぶん、疲れてる人の姿がありありと伺えているはずです。
という具合に、強い推量の must は、be動詞を使った状態を説明する説明文のケースによく使われます。
説明文というのは、be動詞などを使った主語の説明の文という意味です。
ただ、こんなケースもあります。
あなたは先生なのだから、答えを知ってるはずだ
これも、「答えを知っている」というのは「状態」ですよね。
しかも、話し手は、「あなた」が先生だと知っているので、確信を持って推量・推測してると考えられます。
概して助動詞というのは、使い勝手のいい言葉ですし、使ってるうちに、いろんなケースにあたり、そのうちに、いろんな意味が発生するわけです。
mustの過去形
助動詞mustには、唯一の欠点があって、「will」が過去形の「would」になったり、 「can」が過去形の「could」になったりするのと違って、過去形というものがないのですよ。
なので、「午後は家にいないといけなかったんだ」と過去形で物を言いたかった場合、
とは言えないのです。
上の文は、
と言わ「なければなりません」。
have to は、過去形がない must の代用品です。
must には過去形もなければ、未来形もないという不便さがあるので、未来形もこれまた have to の力を借りなければなりません。
明日は家にいないといけないんだ
となるわけです。
mustの過去
なんでmustには過去形がないんでしょう?
実は、mustには触れてほしくない過去が…。
なんて大げさなもんじゃないんですけどね。
なぜなら、mustは、元々が過去形の言葉だったのです。
「~しなければいけない」という意味の古い英語に
というのがあって、なんか「ちびた~ん」みたいにかわいい音ですが、その過去形が must だったんですね。
元々過去形だったので、過去形をさらに過去形にできませんから、それが must の引きずる「過去」というわけで、そういう事情があったからなのです。
推量の助動詞ランキング!
それでは、ついでに推量の助動詞の、推量の要素が強い順にランキングを発表していきましょう!
なお、上に行くほど強く、下に行くほど弱いです。
会話では、「かもしれないね」って時、it 抜きで、Could be.「かもね~」なんて言いますしね。
でも、9っていうのは中途半端なので、番外編の10を入れて、ベスト10にしておきましょうか。
アメリカ人の大好きな g 音の、have to と同格の got to(ガット・トゥー)、あるいは、その音便形の gotta(ガッタ)でも、推量を表すことがあります。
「ご冗談を」と言う時に、
と言いますからね。
強さは、got to は must の代用品の have to と同義ということで、got to も①と考えていいでしょう。
まあ、このランキングは、そうガチガチに厳密に考えることもなく、大枠で、へえ、こんな順番になってるのかと、イメージしてもらう一助になれば幸いです。
では、最後に、ちょっとマニアックな問題
「あなたは、ヴァイオリニストに違いないですよね?」と言いたいとします。
上の文には、「ない」という言葉が入ってる疑問文なので、いわゆる付加疑問文になりますね。
なので、must を使ったとして、
という場合、( )の中には、どんな否定形の省略形が入るでしょうか?
素直に「あなたはヴァイオリニストじゃないの?」なら、
Are you a violinist, aren’t you?
ですよね。
さあ、どうでしょう?
答えはこちら
( )の中に入るのは、mustn’tではなく、aren’t が入るのでした。
ここがややこしいのですが、推量の must の場合、mustn’tは、疑問文系には使わないということになっているのです。
おそらく強い推量なので、疑問文に使うのは変というわけですね。
強い推量に疑問文というのは水と油で、相性が悪いわけです。
もういっちょ
では、最後に、もう一つ。
「俺はここで迷ってしまったんじゃないだろうか?」
という自問自答の付加疑問文を作ることとします。
これを英語にすると、
となりますが、( )の中には何が入るでしょうか?
え~、am not の省略形って、なんだっけ?
う~ん、are not の時は、aren’t なんだけどなあ…
と悩んだかもしれません。
あ、そうだ、アメリカの英語の歌詞になんかで時々、見かける ain’t はどうだろう。
ふふふ、しめしめ、これだな・・・と思った、そこのあなた、答えは × です。
答えは、
なのでした。
これは、ちょっとナックル・ボール級の変化球で、確かに、amn’tという言葉はないし、ain’t は無教養な人たちが作った言葉なので、そんな言葉を使うぐらいだったら、イギリスの紳士は、you の時の aren’t でまかなおうと考えた苦肉の策のようです。
これは、ちょっとびっくりの特例ですが、覚えておくといいかもしれません。
以上、ちょっとした must な深掘りでした。
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