冗談とかギャグがウケなかった時、よく「スベる」って言いますよね。
プロの芸人さんばかりでなく、一般人の我々も、「スベる」とか「さむい」って使いますね。
その「スベる」って英語では何と言うのでしょうか?
「スベる」が日本語のスラングですから、英語のスラングにもそういうのって、あるんでしょうか?
翻訳家さんに聞いてみました。
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▼まだまだ聞いた翻訳家さんの面白解説▼
英語でなんて言う? この状態編を翻訳家さんが解説
英語で「スベる」
bombという言葉を動詞で使う手があります。
bombというのは、名詞で使うと、「爆弾」という意味ですが、動詞で使うと、「大失敗する」という意味になるのです。
お前のネタ、スベったな
とか、もうちょっとドスン感とか、ドカーン感だすなら、
ネタ、えらくスベったな
と言うと、やりやがった感が出ます。
爆弾の他の使い道
アメリカには、映画を観る前に、この映画はおもしろいのかなというのを推し量る時に役立つ映画批評サイトがあります。
Rotten Tomatoes というサイトで、かなり有名です。
腐ったトマトって意味です。
みなさんの意見が英語で書いてあって、それを集計するサイトです。
このような便利なサイトがなかった昔は、ペーパーバックで毎年、映画に★印をつけて、ひどいと爆弾のマークがつけてある本がたくさんありました。
今でもあるかもしれないですけど。
つまり、昔から、映画とか興業系のものが「コケる」ことを bomb という習わしがあったのです。
ドッカーンと「コケる」というこの爆弾的な、戦争流れの言い方は日本語でも「撃沈」と言いますから、なんとなく想像がつきますよね。
ちなみに、なんで「腐ったトマト」なの?
まさか、今の時代、いくら映画がおもしろくないからといって、スクリーンに腐ったトマトを投げつける人はいないでしょう。
ところが、映画が全盛になる以前の舞台では、腐ったトマトが投げられる習慣があったんですね。
そういう流れをくんで、Rotten Tomatoes のサイトでは、
おもしろい作品には(腐ってないから)フレッシュと書かれ、
おもしろくない作品にはrotten という意味で、トマトがぐしゃっとなったマークが付けられてます。
この言葉というか習慣の歴史は古く、シェークスピアの時代から腐ったトマトが投げられていたとも言われています。
なのですが、実はこの話、シェークスピアの時代にはトマトはなかったというのが事実のようです。
トマトを投げた記録までは残ってるはずもなくて、唯一、残っていた記録に書かれていたかわいそうな犠牲者は、役者ではなく、なんと古代ローマの皇帝ウェスパシアヌスという方だだそうで…。
あまり聞いたことない名前ですね。
しかも、投げられたのは、腐ったトマトではなく、蕪(かぶ)だったそうで…。
当たったら痛そうですね。
せめて役者が投げられるとしたら、トマトのほうがまだマシでしょう。
場合によっては、腐った卵の場合もあったそうで、それで気絶した役者さんもいたそうです。
腐ったゆで卵だったんでしょうかね。
トマトだろうが卵だろうが蕪だろうが、お芝居や政治家の演説を聞きに来る民衆にとっては、投げつけるものは、野菜や卵のような身近なものだったようです。
「スベる」だからslipは?
これは、和製英語になってしまいます。
「すべる」だから slip というのは、あまりにも短絡的です。
まさにスリップ事故を起こしかねません。
あ、そうそう、スリップといえば、こんなエピソードを思い出しました。
これはどんな辞書にも載ってないでしょうが、もちろん日本の和英辞典にも、英語圏の英英辞典にも載ってないと思います。
ずい分、前にアメリカのミネソタに行った時、アメリカのご主人と結婚してアメリカ生活が長く、お子様も何人も育て終えた、ある元日本人のおばさまの家にお邪魔してた時のことです。
テレビを観ていたおばさまが、
「今ね、テレビ観ててね。馬のお尻のそばで、slipと来たから大笑いしてたところよ」
と言われました。
何のことか、僕はキョトンとしていました。
やってたテレビは、たぶん『M★A★S★H マッシュ』という映画のテレビ版で、軍医をめぐる珍騒動を描いたコメディです。
そしたら、おばさまが、おそらく日本人には分からないだろうというノリで、その言葉の説明をしてくれたのです。
「ここで言う slip というのはね、馬が大きいのをおもらしすることなのよ。たぶん、辞書には出てこないわね」
と言うではないですか。
確かに、それからしばらくして、日本に帰ってきて、いろんな辞書を調べてみましたが、その意味は載ってませんでしたね。
どんなスラング辞典にも。
でも、意味は分かりますよね。
ギャグの「スベる」が、slip はどう?なんて、考えてるうちに、ついこんなことを思い出してしまったのです。
英語で「さむい」はどうだろう?
「スベる」とほぼ同じ意味の、「さむい」はどうでしょう?
もってこいの cold を使った表現に、「leave 人 cold」という熟語がありますね。
人をどっちらけにさせるという意味です。
ここの cold は「しらじらとする」ぐらいの意味ですね。
これで「お前、今のスベったな」の意味になります。
ほら、leaveには「leave A B」という形がありましたよね。
「AをBの状態のままにする」ってやつです。
これだと、日本語の「寒い」に近いのではないでしょうか?
「スベる」の「さむい」は、feeling cold じゃダメ?
確かに「スベった」時、「サブっ」と言われますものね。
「寒いと感じる」のだから、
I feel cold. とか
I’m feeling cold. は苦しいですね。
「風邪でもひいたのか?」と言われてしまいそうです。
また、I’m cold. はぜったいダメです。
これでは、人間が冷たい、つまり、冷酷な人間になってしまい、それこそ、笑えません。
要注意な面白くないときの表現
皮肉っぽく言う、
というのが英語にはあります。
これは、very からfunnyに向かって下がり口調で言うのが常道です。
日本語で、おもしろくないのに、「おんもしれえ~」と皮肉をこめて言う、あの感覚です。
本当におもしろいときに使うと、誤解される表現です。
ちなみに本当におもしろいときには、
おもしれー!
でいけます。
野菜の表現、ありますね
「スベる」爆弾から、ついつい腐ったトマトの話になってしまいましたが、実は、日本にも大根役者という、同じく食べ物と出し物を関連づけた言い回しがあります。
ただ、それについて書くとなると、またえらく長くなりそうなので、それはまた機会を改めることにいたしましょう。
え、どうしてそうじらすのかって?!
だって、大根だけに、「スベる」から「おろす」に行きたいからなのですよ。
え、話が落ちてないって?!
いや、話を落とすのではなく、「おろす」わけでなのであります。
以上、この記事は「辛み」を加えて終わりますね。
では、詳しくは、また「皿の上で」お会いましょう!
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