英語で「筋が通る」はなんて言うのか翻訳家さんに聞いてみました

英語で筋が通る

翻訳家さんに、英語で「筋が通る」ってどう表現するのか聞いてみました。

聞いているうちに筋が通らない話になって、そこから深い話になりました。

最後は筋が通った気でいます。

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英語でなんて言う? この状態編を翻訳家さんが解説

「筋が通る」って、英語では何と言うの?

make sense

と英語では言います。

例えば、

A君
A君

You look sad. What’s wrong with you?
悲しそうな顔してるね。どうしたのさ?

B君
B君

My boss fired me yesterday.
昨日、会社をクビになったんだ

A君
A君

Oh, that makes sense.
どうりで

こんな感じで言えます。

「どうりで」ということは、「それで一本筋が通った」→「なるほどね」

みたいな意味になるわけです。

「筋が通る」は、「理屈にかなってる」という意味ですよね。

なので、

That makes sense.

は、他の英語で置き換えると、

That is reasonable.

となり、少し固い言い方ですが、「それは合理的だ」とか、「妥当だ」、あるいは「納得がいく」ということになります。

「妥当だ」なんて言うと、B君が首になったのが「妥当だ」なんていう意味になりかねませんが、悲しそうな顔をしてる「原因として」納得できて、論旨が妥当だという意味です。

もっと細かく見ますと、sense 自体の意味は「理屈にかなった状態のこと」です。

漢字二文字にすると、「合理」とか「妥当」ということになります。

 

ここで「筋が通らない」ことが一つあります。

この make sense は「筋が通る」という熟語でとらえてる人が多いと思いますが、make の基本線が「作る」だとしたら、「合理を作る」って日本語的には変な言い方ですよね。

まさに make sense なのに、文法的には「筋が通らない」ってことになって、これはしゃれになりません。

誰もそこを指摘しません。

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makeの正体

make sense のそのまま訳の、「合理を作る」というのは変な日本語です。

「妥当な線を作る」というのも変ですし、どうも論理の世界の言葉と「作る」の相性がよくないですね。

前段で書きましたが、普通、makeという動詞は「作る」という意味が真っ先に頭に浮かびますよね。

ひるがえると、make という動詞にはさまざまな意味が派生していてですね、それを全部ここで紹介するのは大変ですし、それをずらずら書かれたらみなさんもきっと嫌になってしまうでしょう。

単語のさまざまな意味の中から、それを大別して、まとめてくれている Eゲイト英和辞典 というのがベネッセから出ているのですが、これが便利です。

 

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うまくまとまっているので、分け方乗っかります。

それによれば、

1.材料を使って具体的なものを作る make

I made a cake for Christmas.
私はクリスマス用のケーキを作った

のように言えます。

これがいちばん一般的ですよね。

2.物事を生み出す make

その物事は目に見える物とは限らず、抽象的なものも含みます。

例えば、

make money
お金を稼ぐ
make a mistake
間違いをする

などです。

3.目標に到達させる(あるいは、到達する)make

この表現、案外見過ごされている感があるので、最後に深めに解説します。

4.(考えるなどの)判断する make

What do you make of new boss?
新しく入ったボスをどう思う?

このように、

make A of B(BをAだと考える、思う)

という形で使われます。

熟語の、

think of A as B「AをBと考える」

みたいに、make A of B の構成は、「AはBである」という、This is a pen.の構成と同じように、裏でうっすらとした叙述関係を維持しているところがポイントです。

これも目に見えるものではなくないですね。

でも、この使い方はあまり多くは見かけません。

5.「AをBにする」という使役度の強い make

Your kind words made me happy.
あなたのやさしい言葉がわたしを幸せにした

あなたのやさしい言葉がうれしかった

これがいちばんよく知られていますかね。

ここでも、me と happy の間に、うっすらとした I am happy という叙述形式が見えてると今後ともにいいですね。

英語ってやつぁ

英語は、A=BとかA≒Bのように、とにかく主語が来て、その主語を説明したり、むずかしく言うと形容をする言葉が来る関係が大好きです。

文章でも、基本的に主語が頭に来て、それの説明が英語の基本です。

この語順を守ってきたからこそ、元ドイツ語系だった原体験から脱却できたのです。

むずかしく言うと、英語はそうすることによって、格変化という七めんどくさいことから、語順を厳密に守ることで逃れ、進化してきたような歴史を持つ言葉です。

ナチスから逃れてきたユダヤ人とか、あるいは、ユダヤ人の出エジプトと考えるのは大げさ…でしたね。

ま、というようなわけで、makeは一般的な「作る」の意味から、「思う」や「する」の意味まで生み出しています。

出エジプト記
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E3%82%A8%E3%82%B8%E3%83%97%E3%83%88%E8%A8%98

見過ごされがちな make

街を作っちゃうやつ

今から相当昔の、1960年代に大ヒットした曲の歌詞に、こんなのがあって、ドキッとしたのを覚えています。

By the time I make Oklahoma, she’ll be sleeping…

僕がオクラホマを作るまでに、彼女はもう寝てるだろうな…。

当時のわたし、すごいな、街を作っちゃうやつなのかって思いましたよ。

この歌は、

「By The Time I Get To Phoenix」

という歌のタイトルで、邦題は確か「恋はフェニックス」でした。

今はもう亡くなってしまったグレン・キャンベルという歌もギターもうまい歌手の大ヒット曲でした。

この人の

「Gentle On My Mind」

という歌もいいですよ。

英語の語呂が歯切れ良くて、気持ちいいです。

YouTubeでどうぞ。

 

さて、フェニックスというのは「不死鳥」のことではなく、アメリカの都市の名前です。

この歌はルート66を車でひた走る男が、たぶんロサンゼルスに残してきた恋人に別れようと、メモまで残してきたのに、きっと彼女は今頃、それを読んで「また馬鹿なことを言ってるわ」と鼻で笑っては、本気にもしてくれず、何度も何度も伝えようとしたのに、最後まで分かってくれなかったという歌です。

男がまだ強かった頃の、ずいぶんカッコよすぎる歌詞なんですが、ルート66を疾走する車がフェニックスやアルバカーキやオクラホマと車をすっ飛ばして、その街に着くごとに、彼女は会社で、今頃、電話をしてるんだろうとか、今頃はもう寝てて…とか、すごい生々しい情景が浮かび上がってくる名曲なのです。

日本ではあまり知られていない祭神のジミー・ウェッブというシンガーソングライターが書いた名曲です。

アメリカのエルトン・ジョンみたいなピアノの弾き語りの人です。

さて、歌詞に登場するこの男は、オクラホマを作ってしまうようなトランスフォーマーみたいなやつかと思ったら、なんのことはない、

make Oklahoma

というのは、オクラホマを作る頃には…ではなく、

到達するの make

「オクラホマに到達する」という意味だったのです。

 

そう考えると、「恋はフェニックス」というのは、いかにも適当な邦題と言わざるを得ません。

車はあっさりフェニックスを通り抜けて、次の街へ行ってますし、恋は不死鳥をかけたんでしょうかね。

邦題は適当なことがよくあります。

到達の make

目標に到達させる(あるいは、到達する)の make を見ていきましょう。

手を伸ばして届くという意味の reach に似ていますが、reach のように「手を伸ばす」感覚が根底にないのが make の特徴です。

前段の、

make Oklahoma
オクラホマに到達する

のように、目的語が地名だけというわけではなく、

You can make (it to) the last train.
終電には間に合うはずだ

という使い方もできます。

目標物を直に持ってきて、上のように「間に合う」という意味にも使えるのです。

 

これがさらに進化すると、「理想」という意味にまでいつのまにか発展していた、あの it という見慣れた単語が「成功」という目標物になって、make itで「成功する」という意味にもなり、

She made it in fashion world.
彼女はファッション界で成功を遂げた。

とまで言えます。

「作る」から「遂げる」です。

 

This movie is really it.
この映画は最高だ

もともと代名詞だった it が、いつのまにか普通名詞になって、「理想」とか「望ましいもの」に進化した例です。

子供の間では鬼ごっこの「鬼」とか、大人の間では「性的魅力」みたいなになってしまった時代もありました。

要は、その時々で「理想的なもの」になれて、そう言われたほうが察しをつけるわけです。

 

もともと make というのは、語源的には「混ぜる」という意味の merge と系列が同じです。

一般的な「何か材料をこねて、物を作る」から、「理想とか場所とかに合体する」抽象的なイメージでとらえていいと思うのです。

企業の合併吸収のことを略語で M&A と言いますが、これは、

merger and acquisition

を略したもので、合併の merger は、「混ぜる」の名詞形です。

結局、「作る」も、「ケーキとか作りたいものと意識を合体させ、できあがったものに焦点を当てること」とも言えなくもありません。

強引に言うとね。

いいとき専用

例えば、何か目的を遂げて、「やった!」と言いたい時には、よく、

I made it!
やったあ!

という言い方を映画でもよく見かけます。

一方で、

I did it!

とも言いますね。

「それをする」の do it です。

この I did it! は、「やったあ!」だけでなく、ドジを踏んで「やっちまった!」という時にも使えます。

それに対して、I made it! はいい時専用です。

つまり、make は「物を作ったり」する意味もあることから、作り上げたものは結果としていいものであるという含みがあるため、こうなるのでしょう。

お祈り申し上げます

ここまで取り上げた 5つの make を総合した基本的な原義は、

(材料に手を加えて)何かを作る

ということです。

「作る」という具体論か、「考える」や「意識が到達する」の抽象論の差ということです。

ちょっとむずかしくなってきましたかね。

かなり思い切った議論に踏み込んでしまいました。

わたしは学者じゃないので、あくまで長年培ってきたイメージです。

長くなりましたが、なんとか皆さんが、最後まで You made it.できてたら、しめたものなのですが…

以上、一応、これが make の正体です。

make sense だけに〝筋が通る〟といいのですが…

「つじつま」が合って、「ストンと腑に落ちて」るでしょうか。

「やっちまった」の I did it! じゃないことをお祈り申し上げます.

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