ハナモゲラ語って若い方はご存知ないですかねえ。
アラフィフ以上じゃないと、聞いたこともないかなあ。
英語にもあるらしいんですよ。
翻訳家さんが教えてくれました。
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英語でなんて言う? 面白ネタ編を翻訳家さんが解説
タモリのハナモゲラ語は英語で何と言うの?
せっかくタモリ倶楽部で有名になった空耳の話をしたのですから、ハナモゲラ語もちゃんと押さえておかないといけませんね。
そもそもタモリさんのハナモゲラ語というのが分からない人がいると思うので、ちょっとそこにも触れておきましょう。
要するにハナモゲラ語というのは、インチキ外国語のことで、いかにも外国語っぽく発音してるように聞こえるのですが、実はまったく架空の言語なのです。
結論から言うと、英語もちゃんとあります。
英語では、これを
と言います。
ジバーリッシュは一種の言葉遊びにもなっていて、
例えば、
↓
didigog(ディディゴッグ)
こんな具合に、d と og の間に –idiig– というスペルをわざわざ挟むのです。
あるいは、猫の cat に -idiig- をはさむとどうなるかというと、
という風に言って遊ぶわけです。
これをいざ作る側となると、タモリさんのハネモゲラ語のように、頭がウニになりますね。
こりゃなかなかめんどくさいなと思った人は、覚えておきましょう。
この単語、ちんぷんかんぷんだという意味合いに使えます。
彼らの言ってることはちんぷんかんぷんだ
と言えるんです。
gibberish(ジバーリッシュ)という単語が、発信元のTamorish(タモリッシュ)とかになってなくて、ちょっと残念なのです。
インチキ外国語に気づいたのは、残念ながらタモリさんより早い人がいたようですね。
四か国麻雀からハネモゲラ・ワールドへ
いちばん有名なのは四か国語麻雀じゃないでしょうか?
タモリさんが、中国人もどきを装って、インチキ中国語をしゃべりながら一人で麻雀をするんですが、中国語っぽいけど、時々、日本人にも分かるようなインチキ単語を入れてくるもんですから、インチキと分かるところがおかしいわけです。
このハナモゲラ語は麻雀にとどまらず、やがてハナモゲラ短歌というのに進化していきます。
もともとハネモゲラというのは、ジャズ・ピアニストの山下洋輔さんのグループのことで、ハナモゲラ語の発案者はサックス・プレイヤーの坂田明さんのアイディアとも言われています。
ハナモゲラというのは、鼻がもげそうに「臭い」から来てるんじゃないかと、これは勝手な想像ですけどね。
このグループには今は亡くなってしまった相倉久人さんというおもしろいジャズ評論家がいましてね。
このグループは草野球のチームを作ってました。
そのチームの名前が”ソークメナーズ”とは、これまた。
ミュージシャンのさかさ言葉が分かる人は、「あ、汚ない」と思うかもしれませんが、遊びや諧謔が大好きなグループですからね。
そういえば、タモリさんが作詞したハナモゲラ短歌の歌を、所ジョージさんも歌っていたようです。
それが、
「けさめらの親王むれさのはけ姫に詠む」
という歌。
ちんぷんかんぷんだけど、なんとなく短歌っぽいでしょ。
「みじかびの きゃぷりきとれば すぎちょびれ すぎかきすらの はっぱふみふみ」
これは、故大橋巨泉さんの有名なハナモゲラ短歌です。
最後の「はっぱふみふみ」は、巨泉さん印の有名なフレーズになりました。
さらに、このハナモゲラ短歌のことが知りたい人は、あの大出版社”小学館”から、『ハナモゲラ和歌の誘惑』(著/笹 公人)という本が出ているので、読んでみてください。
本の内容情報からは、1970年代半ばから1980年代初めのサブカルチャー文化のど真ん中のシャープな考察って感じですかね。
ちなみに、僕は読んでません。
めちゃめちゃ興味ありますけど。
僕の誕生日、書いておきます?
いらない!?
あ、そうですか。
ホブソン・ジョブソンって何だ?
この gibberish と非常に似た現象が英語にはあって、
という言い方もあります。
たとえば、おそらくみなさんが大嫌いなアブラムシは英語で
と言いますが、これはスペイン語の cucaracha(クカラーチャ)から取り入れたインチキ外国語なんです。
コックローチ、クカラーチャ・・・なんとなく、似てませんか?
これも一種の空耳ですね。
実は、Hobson-Jobson というのは、イギリスがインドを統治していた頃に生まれた言葉で、インドのムスリムたちのハーシュラーというお祭りで、人々がしきりに、
「ヨー、ハッサン。ヨー、ホセイン」
みたいなことを口々に叫んでいたそうです。
それを聞いたイギリス人には、
「ホッシーン、ゴッシーン」
のように聞こえたらしく、それがやがて、いかにもイギリス人には発音しやすい
「ホッシー、ゴッシー」
に変わり、結局、ホブソン・ジョブソンになってしまったというわけです。
この繰り返しは、イギリス人は大好きで、
ナースリー・ライムという古くからある童謡なんかでも、
Humpty Dumpty(ハンプティ・ダンプティ)
というキャラクター名もこの繰り返しですし、フォークダンスの
hokey pokey(ホーキー・ポーキー)
もそうですね。
のちに、ホーキー・ポーキーは「まやかし、いんちき商品」という意味も担います。
とにかく、この繰り返しは語呂がいいんでしょう。
日本の五七五調みたいにね。
「めめしい」という意味の軽蔑語として使う
namby-pamby(ナンビー・パンビー)
もそうですし、同じく軽蔑語の「ちんぷんかんぷん」の
mumbo-jumbo(マンボ・ジャンボ)
も繰り返しです。
話はマンガのタンタンに飛びます
日本人にはあまりなじみがないかもしれないんですが、ヨーロッパ、特にフランス語圏では大人気のコミックに『タンタンの冒険』シリーズというのがあります。
それに出てくる、双子でもなく親戚でもないのに、そっくりな口ヒゲを生やした二人組のドジな刑事”デュポン&デュボン”。
カタカナ時点で、もうまぎらわしいですけど。
ポとボが違います。
○と濁点が付いてるかの違いです。
これ、英語圏だと
Thomson and Thompson(トムソン&トンプソン)
と英訳されています。
うまいですね、この英語訳。
タンタン(Tin Tin)の作者はベルギーのエルジェという人なんですが、案外、日本の子供たちには人気があって、図書館の児童書のコーナーに行くと、シリーズがいっぱい置いてあります。
日本の大人には、イマイチ、人気がないのが残念ですけどね。
このコミック、フランス語圏の人にはアルファベット読みのほうが通じます。
でも、日本の子供には、まずい音になるから、タンタンにしたんでしょうね。
やっぱり空耳は重要
というわけで、ハナモゲラ語からホブソン・ジョブソンに至るまで、通底してるのは、結局、”空耳”というキーワードだったわけなのです。
英語の単語だけ知るのではなく、こういう大枠の言語システムみたいなことを理解するのも、英語の習得にはとても大事なことだと、僕は考えているのです。
おしまい。
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