和製英語はネイティブには通じないからって、シカトするんじゃなくて、日本語と英語の違いを気づかせてくれるために、結構使えるスイッチになってくれるって話を、翻訳家さんがしてくれました。
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▼まだまだ聞いた翻訳家さんの面白解説▼
「英語の○○って…」的な質問に翻訳家さんが答えてくれました
英語をしゃべれない人伝説
「ここ!」って叫んだらココアが出てきたという伝説
もう亡くなりましたけど、勝新太郎という存在感のある日本の名優さんがいましたね。
映画の座頭市シリーズとか、パンツにいろいろ隠しててて大騒ぎになったので有名な人です。
英語がまったくしゃべれなかった勝さんが、アメリカのレストランに入った時、ウェイターがなかなか来ないので、日本語で「ここ!」と大声で怒鳴ったら、ココアが出てきたという話を聞いたことがあります。
ほんとかどうか知りませんが(笑)
確かに、英語ではココアはカタカナで書くとココーに近い音です。
飲み物としてのココアは、
hot cocoa
と言います。
日本で発音するココアは、和製英語というか、カタカナ英語というのか、英語圏では飲み物ではありません。
なので、もしかしたら勝さんの話は、英語に弱い日本人としての都市伝説なのかもしれません。
アウトプットが微妙だった伝説
そういえば、身近にも英語がからっきしダメな人いました。
友達のMさんという映画監督が、アメリカにロケか何かで行って、帰ってきて、俺も英語を覚えたぞと自慢してる時がありましてね。
どんな言葉かと思ったら、忠実にカタカナで採録すると「ウーフン」という発音だったのです。
ウッフンとか、ちょっと夜っぽい言葉で申し訳ないのですが、そりゃあ、「アーハン」のことじゃないかとたずねると、「あ、それそれ」という答え。
確かにアーハーとかアハーなら、英語のネイティブ・スピーカーの人が相槌で言うのはよく聞きます。
それ、英語って言うかなあとは思いましたが、確かに、アーハーはれっきとした英語です。
スペルは
です。
本格的な単語レベルでないのは残念ですが、覚えてきた本人が覚えてきたと自負してるので、冷たくはできませんでした。
こんな調子でいいのです、英語の覚え方なんて。
ちりも積もれば何とやら、ですよ。
トイレは英語習得の入口だ
さてさて、英語が苦手な人が外国に行って、まず第一にどんなことに困るでしょうね?
もっともっと根源的な問題から行きましょうか。
ココアと同様に、カタカナ英語だと指し示す存在が微妙にズレているのがトイレです。
アメリカに行って、もしトイレに困って、
「Where’s トイレ?」
はキョトンとされるでしょう。
あるいは、
Where’s the toilet?(ホエアズ・ザ・トイレット)
と聞いてしまうかもしれません。
まあ、これでも十分通じますが、toilet というと便器そのものを想像してしまいます。
日本語の「トイレ」よりも「便所」に近い直接的なイメージなので、
なら遠回しなので、間違いないでしょう。
bathroom のかわりに、restroom ならもっと品が出ます。
英語圏のトイレは、家庭ではバスルームの中にあることが多いですし、restroom は直訳すると、「休む部屋」という婉曲表現で、直接的な言い方でないので、品が出るわけです。
「どこで手を洗えますか?」
↓
「お手洗いはどこでしょう?」
なら、さらに上品で、完璧です。
こんな風に、日本語で当たり前になっている言葉は、ほんとのところ、英語では何と言うのだろう、と、いい意味で疑っておくことは、何も英語圏に旅行の必要がなくても、英語の習得には、結構大事な予備知識です。
人間、切羽詰まってくると、この言葉、ほんとは英語で何て言うんだろうなんて余裕はありませんから、日頃から再検証しておくのは有用です。
とっさに出てきそうな日本語をあらかじめ検証しておきましょう。
いかにも英語らしく、英語のふりをしてるくせに、とっさに出てきそうな和製英語というのは山ほどありそうですからね。
和製英語は、それこそ、外国に行く前に直しておけるものですから、今のうちに直して、日頃から直しておくのがいいわけです、
いざという時のために。
そのためにも、今のうちに慣れておきましょう!
ペットボトルって英語じゃないの?
マラソンを沿道で観に行くことがあったとして、暑いさ中、ペットボトルのスポーツドリンクでも飲むことになるかもしれません。
たとえば、このペットボトルってやつが結構、クセモノで、全部カタカナのくせに、実は英語ではなく、完全に和製英語なのです。
ペットと言うからといって、ボトルを飼ってるというのもおかしいですからね。
ペットボトルのペットは「PET」と書き、
ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate)
という合成樹脂(plastic)の略語です。
なので、英語圏では、簡単に
と言えばいいのです。
なあんだ、ですよね。
スポーツでケンカに巻き込まれる危険のある日本人
それから、走ってる選手に「ファイト!」って、ついつい言ってしまうかもしれません。
でも、この言葉、英語圏の人からすると、「ケンカだ、ケンカだ!」って聞こえます。
火事と喧嘩には目がない江戸っ子じゃあるまいしね。
あるいは、運動着を着た部活動中の女の子の集団が、「戦え、戦え」と連呼しながら川っぺりを走ってるのを見ると、これは女の子の新兵訓練なのかと思うネイティブもいるかもしれません。
頑張れは、日本独特の考え方
そもそも英語圏の人は、相手を励ます時、頑張れ!とは言わないのです。
「頑張れ」って、極端に言えば、無理しろってことじゃないですか。
日本の体育会系の悪いところは、こんなところにあるのかもしれませんけどね。
でも、英語圏の人は、「がんばれ!」とは言わないけど、「いいぞ!」とか「行け、行け、行け!」的な感じの励まし方はしますね。
アメリカのスポ根ものの映画を観ていると、プロ野球の観戦なんかでこの頃はよく耳にするようになったのが、
ですかね。
フライに飛びつこうとしてる内外野手とか、ゴールに向かう選手を鼓舞するのに使えます。
その他、
とか、ちょっと間にあまり意味のない呼びかけの Hey,man的な man が入った、
とか、
「よくやった!」寄りの
なんていうのも耳にします。
これは、
が略されたなれの果てで、「その調子でいい」ってことです。
日本語でも、「その調子!」って、「いい」をはしょって言いますもんね。
励まし言葉の解体新書
女子に対してだったら、
とか、
男子にだったら、
なんていうのも聞きますね。
このフレーズは「いい子だ」的に犬にも使うので、使うなら、自分の子供とかの目下かなあ。
それぞれ、
That’s the boy. → Atta boy!
と、なまった形のものなので、最初の Atta が a だからといって、
That’s a girl.
の略だと思い込むと、それは普通の女の子の姿だ的なイメージになってしまいます。
ここはぜひ元が the 付だと肝に銘じておいてください。
この the は目に見えないスポットライトが当たる感じなので、
「それでこそ、女の子(男の子)の鑑(かがみ)ってもんだ」
的なニュアンスがこめられているのです。
ついでと言ってはナンですが、野球に関連した go の使い方が出てきたので、ホームランを解説するアナウンサーの実況でよく出てくる「(これは)大きいぞ、入るか、入るか、入った、ホームラン!」もご紹介しておきましょうか。
です。
フェンスに向かう瞬間までが、ing 付きの go の「ただ今進行中」のイメージです。
フェンスを越えた瞬間、完了形の goneになるわけで、進行形と完了の説明にはもってこいの例ですね。
フェンスが分かれ目に当たる結界というわけです。
結び
え、なるほど、Way to go!(いいぞ)ですって・・・ありゃあた~んす。
Atta girl! や Atta boy! も、「ありがとうございます」がナマっちゃうのと同じようなものなわけなんです。
英語が苦手な人は、まず日本語が頭の中に浮かび、どうしてもそこから英語化しようとするのが実情です。
まずはいかにも日本語的な表現を英語にすると、どういう英語になるんだろう?をやっておくのが、いちばんてっとり早い手のように思います。
日本語独特の表現だったのかと、気づくこともあるでしょうし、さらに日本語と英語の違いに気づき、英語習得の早道になるかもしれません。
頭の中にまず浮かぶのは、慣れ親しんだ日本語で当然です。
今までどこか卑下していた和製英語が、ほんまもんの英語への、案外、脱出の糸口になるかもしれませんよ。
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