英語で「眉唾(まゆつば)」は何て言うか翻訳家さんに聞いてみました

英語で眉唾

英語で眉唾。眉も唾もなんていうかわからない人に、翻訳家さんが解説してくれました。

いろいろあるようです。

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英語で「眉唾(まゆつば)」名詞系

cock-and-bull story

名詞系だとこういう言い方があります。
「眉唾な話」と、話まで含んでますけどね。

まとまった言い方なので、storyを主語にすれば、cock-and-bull が形容詞的に使われているので、

His story is cock-and-bull.
あいつの話は眉唾だよ

となります。

雄鶏(おんどり)の cock と、牡牛(おうし)の bull がペアでstoryを飾ったおもしろい言い方ですね。

前にある cock-and-bull が束になって形容詞的に story を飾ってますが、英語では、名詞A+名詞Bという形で名詞が連なった場合、名詞Aが形容詞的な働きをすることはよくあります。

ここでは名詞A群と言ったほうがいいかもしれませんね。

Aに当たる二つの名詞が and で連結してるので。

特にアメリカ英語は名詞を並べて、前が後ろを形容詞的になる使う組み合わせは大好きと言っていいですね。

たとえば、

baby talk

と言えば、「赤ちゃん言葉」とか「幼児語」ということですが、前の名詞Aは「赤ちゃんのような」という形容詞の役割をするわけです。

そもそも形容詞というのは、名詞を飾るのが主な役目です。

話を戻して、cock-and-bullの件ですが、ネットの英和辞典を引くと、

「ロンドンとバーミンガムの間にある駅馬車の宿屋 The Cock と The Bull からという説や、
おんどりと雄牛が登場する古い民話からとする説などがある」

cock-and-bullの意味・使い方
cock-and-bull 【形】眉唾物の - アルクがお届けするオンライン英和・和英辞書検索サービス。

とあります。

後者の説のことはよく知りませんが、僕は前者派で、

おそらく〝おんどり亭〟と〝おうし館〟という旅籠(はたご)が、「うちのほうがよござんす」とか「あちらさんのことは知りまへんが、うちのほうがよろしゅうおまっせ」と言ったかどうかは知りませんが、どうやらそのあたりではないかと推測しています。

えっ、その説は眉唾だろうって?

語源というのは、文献が残ってないものも多いし、そのため素人語源説も多いので、あくまで参考にすると言うか、記憶の手づるぐらいにしておいたほうが第一、楽しいです。

覚えやすいのを覚えて何が悪い、ぐらいでよろしゅうおます。

なんで元はイギリスの話なのになんで関西弁になるのかは分かりませんがね。

ちなみに、小さい国ほど方言が多いってご存じでしたか?

アメリカのような大きな国でも、イギリスほどアクセントは、幅広くはありません。

英語はそもそも英吉利のものなのに、亜米利加はアクセントの多さでは及ばないというのは意外ですよね。

なので日本は鼻を高くできます、つったって、そう方言を知ってるわけじゃござんせんが。


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英語で「眉唾(まゆつば)」形容詞

fishy

英語には他の「眉唾」に相当する言い方に、

fishy という形容詞があります。

もともとは「魚臭い」とか「生臭い」という意味でした。

それが「うさんくさい」と眉唾寄りになってきたのは、これも二つぐらいの説があります。

一つ目は魚というのは「つるつるすべりやすいから」説。

話が本当から嘘にすべっていくイメージです。

二つ目は文字通り「生臭い」から「怪しい」へと変わっていった説。

「胡散(うさん)臭い」という日本語も臭いませんか?

ちなみに、嫌だっていう「におい」のほうは「臭う」を、いい「におい」は「匂う」と個人的に使い分けることにしてます。

正しいかどうかは知りませんが、と書こうとて調べたら、合っていました。

みなさんもそうしてください。

いい匂いに申し訳ないのでね。

あ、胡散(うさん)の話でしたね。

これも二つの説があるようで、

一つ目は疑わしいという意味の「胡乱(うろん)な」から来たという説。

もう一つは、黒い釉(うわぐすり)をかけた天目茶碗に「烏盞(うさん)」というのがあって、それに似てる=それ臭いという説です。

僕は後者に一票ですね。

天目茶碗というのは写真で見れば一目瞭然、一目で高価な茶碗と分かり、胡散という字を充てたのは、和製漢語らしいです。

和製英語ばかりでなく、和製漢語というのもあるのですよ。

和製漢語ばかりでなく、和製漢字という漢字自体を、日本独自に作ったものもあって、それを国字と言います。

峠なんかもそうで、お寿司屋さんによく置いてある湯飲みに書いてある魚偏なんかにも多そうですね。

ついでに「胡乱(うろん)」の語源

この言葉は、室町時代の禅僧から伝わった言葉らしく、胡は「えびす」と読み、胡はモンゴル高原で活躍した騎馬民族「匈奴(きょうど)」のことで、匈奴が攻めてくると人民があわてふためき国が乱れたという中国から見ての言葉のようです。

胡で乱れたので、敵は怪しいから胡乱なんでしょう。

英語で「眉唾」いろいろ

I think his proposition is fishy[cock-and-bull].
「やつが持ちかけた話は眉唾だと思うよ」

proposition というのは、pro- が「前」で、position は察しがつきますよね、「置く」です。

つまり、「前に置く」から「提案」=持ちかけ話ということです。

要するに、「あいつの話は怪しい」ということですから、「怪しい」を意味するラテン語系の dubious とか suspicious でもいいわけです。

なんだ、早く言ってよと言われても、それじゃあ、当たり前すぎるので面白くないでしょ。

当たり前じゃないのをご紹介

His story is too good to be true.

というちょっと長めのやつ。

大事なのは、

too good to be true

の部分です。

出ました! 中学校でもやった

too~to…の
①「~すぎて…できない」と前から攻めるパターン
②「…には~すぎる」って後ろからも攻められる熟語

どっちでも訳せます。

まず①から、
「話がうますぎて本当ではない」

②は
「本当であるには話がうますぎる」

というわけです。

いちばん大事な言い方

遅くなってすみません。

これがいちばんおもしろく、またいちばんの奥深い文化探検になっていきますので、言葉探偵の腕の見せ所です。

言い忘れたのは

take something with a pinch of salt

という言い方です。

たとえば、「あいつが世紀の大発見だと言ってることは、どうも眉唾だと思ったほうがいいぞ」と言いたいとしますね。

これを英語にすると、

You have to take his “groundbreaking” findings with a pinch of salt.

となります。

この take は、ほぼ「考える」に近い「受け取る」とか「受け止める」という意味です。

日本語でも、「彼女の気持ちをどう受け取るかは君次第だ」などと、「受け取る」は「考える」の意味でも使いますが、それと同じです。

で、ただの「彼の発見」なら、単に his findings なんですが、その前に“groundbreaking”という言葉が付いてますね。

普通、groundbreaking というのは、「画期的な」「革新的な」という意味ですが、わたしは感じを出すために、「発見」の前に「世紀の大」という形容を使いました。

「地面を壊す」が、なんで画期的かというと、元になっている動詞句の break ground が元々は「土地を耕す」という意味です。

それが比喩的に発展して、「事業を始める」とか「新分野を開発する」へ発展していったので、革新の「新」のイメージがあるわけです。

なので、ここの groundbreaking は「画期的」の意味です。

それよりも、注目してほしいのは、案外見落としがちな “ ”のマークなのです。

この引用符は、案外要注意で、この場合は何かを発見した「あいつ」の言った言葉をそのまま引用したよという意味です。

「あいつ」が「画期的」とか「世紀の大」と言ってるのは、あくまで「あいつ」であって、こっちから見ると怪しいもんだというニュアンスが出ます。

前段で既にあやしい感が漂ってる中、最後の with a pinch of salt でさらに「眉唾」感のダメを押します。

「あいつが言ってる世紀の大発見」は「塩を一つまみ入れた感じで受け止めたほうがいいぞ」と言っているのです。

「塩を一つまみ」、つまり「塩を少々」というのは?

イギリス英語では take の後に

with a pinch of salt

を仕上げのスパイスのように最後に付け足しますが、

アメリカ英語では

with a grain of salt

を付け足します。

あ、pinch は洗濯バサミのようにはさむことですから、塩を一つまみということです。

grain は穀物という意味もありますが、ここは一粒ということから少量という意味です。

穀物も元々は粒粒です。

 

実は、この熟語には古い古い歴史がありましてね。

ここにも二つの説があります。

一つは、古代ローマの軍人・政治家でもあった博物学者、大プリニウスという人物が書いた「博物誌」に、毒を飲まされた時に「少量の塩」を飲むと解毒剤になると書かれていたそうで、どうやらこの考えがヨーロッパに広まり、言葉にも反映されたらしいのです。

書かれたのは、紀元77年です。

ほんとかなあ、塩を少々飲んだくらいで解毒剤になるとは思えませんけどね。

でも、「博物誌」はルネッサンス期にヨーロッパの知識人に広く読まれ、愛読されたようですから、この考えが広まっても不思議はないです。

それと、もう一つの説は、もう少し歴史をさかのぼって、紀元前60年ごろの共和制時代のローマの軍人で政治家ポンペイウスが信じていたのは、もっと恐ろしい方法です。

ポンペイウスは、毒ちゅうもんはいろんなのを日頃少しづつ飲んでおくと、いざやばい毒を飲まされた時に効かなくなると信じていたらしく、そのいろんな毒を飲む際に塩を少々入れて「服用する(take)」すると、飲みやすくなるという恐ろしい説です。

そんぐらい、いつ毒殺されるか分からない時代で政情だったという裏付けですね。

なんせシーザーの有名なセリフ「ブルータスお前もか」の時代ですから。

ただね、ここからさらに文化の奥地に入りますよ。

ラテン語では塩のこと salt ではなく、sal とか salis と言うんですが、この salis には、「塩」のほかに「知恵(wit)」という意味もあって、この wit は caution(用心)とも解釈できます。

なので、

take something with a pinch of salt

は、「毒は気をつけて飲め」と言っていただけかもしれず、二枚腰的に眉に唾をぬって聞いておきましょう。

というわけで、話が長くなりましたが、「眉に唾をつけて受け止める」の意味で

take something with a pinch of salt

を使う場合、日本には「割り引いて受け取れ」という言い方がありますから、この訳のほうがぴったりくるでしょう。

眉に唾をつけるなんて、考えてみたら少々バッチイ「眉唾」ですから、除菌した「割り引いて」へ、何だかんだ話が発展してきましたね。

眉唾が持つ日本語の言語文化の事情から古代ローマの文化事情的に。

それに、塩には除菌効果ありますしね。

「知恵でもって受け取れ」ちゅうことです。

眉唾からキツネとタヌキの話が出てきたと思ったら、長い間、物騒な毒の話までおつき合いくださいましてありがとうございました。

え、以上の話は全部眉唾くさいって?

わたしはキツネでもタヌキでもありませんので、どうかご安心を。

ちなみに眉唾な理由

そもそも日本語の「眉唾」とか「眉唾もん」って、どうしてそういう言い方になったのでしょうね?

「眉に唾をつける」という言い方は江戸時代からあったそうで、明治時代になって縮まって「眉唾」とか「眉唾もん」という言い方になったそうです。

日本では古来より、キツネやタヌキに化かされるという迷信があり、化かされないようにおまじないとして眉に唾をつけていたのが大元らしいです。

「へ~」ですよね。

イギリスの宿屋の悪口は言えませんな。

五十歩百歩です。

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