英語で「へそが茶を沸かす」は何ていうか翻訳家さんに聞いてみました

英語でへそが茶を沸かす

「へそが茶を沸かす」は英語あるんですかね?
「へそがコーヒーを淹れる?」「へそがミルクティを淹れる?」
翻訳家さんに聞いてみました。

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英語で「へそが茶を沸かす」って何と言う?

Pigs might fly.

という言い回しがあります。

まさか、こんなあまりにも日本的な言い回しに似た英語なんてあるわけないよな、と思っているそこのあなた、なんと、それがあるのですよ、英語にも!

Pigs might fly.

えっ、「豚が空を飛ぶかも」って?!

おもしろい言い回しですねえ。

あ、「かもしれない」の might は、同じ「かもしれない」の may よりもっと可能性が低い意味合いです。

この might は will とか can でも大丈夫ですが、will のほうが多いかなあ。

あと、

When pigs fly

という、when を使ったバリエーションもあります。

この場合は助動詞抜きで大丈夫です。

もともと「豚が空を飛ぶ」こと自体がありえないので、when 以下はまだ起こってない未来に対する発言です。

when には might の気持ちが既に漂っているので、この場合 might は不要です。

では、なんで「豚が空を飛ぶ」が「へそで茶を沸かす」のかを解いていきましょう。

「豚が空を飛ぶ」が「へそで茶を沸かす」

そもそも「へそで茶を沸かす」というのは、いろんな説があるようですが、お腹の皮がよじれるのとヤカンがお湯を沸かす状態が似ているという発想のようです。

また、それに「茶化す」という言葉にもある、「お茶」の連想が働いたのでしょう。

「へそが茶を沸かす」が、ただ単純にめちゃくちゃおもしろいという意味であれば、

That joke was hilarious.

「あのジョークは抱腹絶倒だった」と、腹を抱えて、倒れてしまうくらいおかしいという意味の「抱腹絶倒」系の hilarious という単語を使えばいいわけです。

今、「抱腹絶倒」系と書きましたが、英語にもその系列の言い回しがたくさんありましてね。

まずは、

「あの映画はメチャおかしかった」と言いたければ、単純に hilarious を使って、

That comedy film was hilarious.

と言えばいいのですが、ただ、これは腹を抱えて笑うビジュアルや具体性に欠けます。

そこに映像を加えると、

That comedy film had me splitting my sides (with laughter).
あのコメディ映画では腹を抱えて笑った

と腹を抱えて笑う様子を映像的に言えます。

割る

英語では「腹を抱えて笑う」場合は、「脇腹が割れる」という言い方をするんですね。

sides

はお腹の横のほうにあるので、「脇腹」です。

ベースボールでは激しく落ちるボールを、日本のようにフォークボールとは言わず、ただ split(スプリット)と言いますが、人差し指と中指を食べる時に使うフォークのように、指を「割る」からです。

他にもビジュアル系として、

Monty Python’s “Killer Joke” had me rolling in the aisles.
モンティ・パイソンの〝殺人ジョーク〟には、腹を抱えて笑ったよ

という意味になって、笑い転げて映画館の通路をのたうち回る姿が目に浮かんできませんか。

同じ roll(転がる)系の言い回しには、こんなのもありますね。

He told me a joke and I literally rolled around laughing.
あいつが言ったジョークには、文字通り、転げまわって笑ったよ

ただ、「げらげら笑った」という笑い声が聞こえてくるような音系の burst out laughing.というのもありますが、あまりおもしろくありませんね。

爆発のイメージの burst を使った「爆」笑した的な言い回しですが。

同じ音系の laugh out loud というのもありますが、「声をたてて笑った」という感じであまりおもしろくありませんね。


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豚が空を飛ぶ理由

さてさて、では、そろそろ真打の Pigs might fly にご登場願いましょうか。

そういえば、ピンク・フロイドというイギリスのロック・バンドの「アニマルズ」というアルバムがあります。

そのアルバムでは、なぜか豚の巨大風船が浮かんでる映像があったような気がしますが、それでピンときた人もいるのではないでしょうか。

そう、その元になっているのが、この豚が飛ぶ系の言い回しなのです。

では、どういう使い方をするのかというと、

A君
A君

I’ll finished my writings tomorrow.
「明日までに原稿を終わらせるよ」

B君
B君

And pigs might fly.
「そんときゃ豚が空を飛ぶな」

というような感じで、 「明日までに原稿を書き終える」なんてありえないことを言った人に、
「そん時は豚が空を飛ぶな」とありえないことを引き合いに出して答えるわけです。

つまり、

「へん、ちゃんちゃらおかしいぞ。へそでお茶を沸かすわい」

と言ってるに等しいわけです。

ありえない VSありえない、の形をとった強い否定です。

前に and がついてますが、これって結構大事で、この and には then(その時→そしたら)の気分が込められています。

前段のありえない発言の内容が「もしも~なら」のif節の内容だとすると、それに続く内容はこれねという目印の then をつけて後を続ける、ありがちなパターンがありましてね。

いわゆる

if …(A), then …(B).

という相関関係があって、

「もしAならば、Bだろう」

という叙述の、ここが後半ですという目印のthen(その時は…)です。

その then に当たるのが、さらりと出す and です。

また、最初の章でご紹介した、Pigs might fly.のバリエーションの、When pigs fly.です。

A君

Hey, foxy lady. Wanna date with me?
ねえ、色っぽいおねえさま、俺とデートしたくねえか?

Bさん

Ew, When pigs fly.
あ~、ムリ

というわけで、「あなたとデートするのは、豚が飛ぶ時ね」と答え、ありえないたとえを出して、

That’s impossible.
ありえへん

と答えてるわけです。

また、同じくバリエーションとしては、

Pigs will fly before you ever hit a 100 hundred million yen lottery!
あんたが一億円の宝くじを当てるなんて、豚が飛ぶくらいありえへんね

というわけです。

要は、pig と fly がからんできたら、へそで茶を沸かすくらいありえないということです。

こんな言い回しは、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」でも使われていて、「もしも豚に翼がついていたら」という言い方をしてますね。

ダッチマン発話

これと似たのに、ダッチマン発話というのがあって、この考え方はおもしろく、また重要です。

あなたがオランダ人「でない」場合しか使えませんけどね。

例えば、野球やサッカーなどで明らかにゴールなのに点が入らなかった場合に、

If that’s neutral officiating, I’m a Dutchman.
あれが公平な判定だなんて、ちゃんちゃらおかしい(=へそで茶を沸かす)わ

という使い方です。

公式としては、

If~ , (then) I’m a Dutchman.

という形で、前段の内容を強く否定するパターンです。

「もし~だというなら、俺はオランダ人だ→オランダ人じゃないので→ありえない」

というロジックです。

なんでオランダ人なのか?

イギリスはオランダと東インド会社なんかで商売仇というかライバルでした。

17世紀には英蘭戦争というのもやってたぐらい仲が悪かったという背景があります。

「割り勘にする」を

go Dutch

と言ったり、「割り勘」自体を

Dutch account

と言ったり、ケチなイメージがあったみたいです。

また、「いっぱい食わせる」を

beat the Dutch

と言ったりするのなんか、ライバル丸出しですし、オランダ人はさんざんですね。

ちょっとオランダから離れて、誰かが、

「俺はすごすぎて、まるでスーパーマンみたいだな」

と、うそぶいたとしましょう。

それに対して、こう言えます。

If you’re a Superman, then I’m a Dutchman.
もしお前さんがスーパーマンだと言うなら、俺はオランダ人だ=ありえへん

という言葉の綾です。

スーパーマンに a がついてるのが、ややポイントで、固有名詞を普通名詞化して使ってます。

その a がなかったら、ほんとのスーパーマンやドナルドダックになってしまいますからね。

お前がスーパーマンの一人だったとしたら、というイメージです。

後半部分を、I’m a Donald Duck.で受けるという形は、確か『逃亡者』という映画のセリフにありましたね。

「お前がスーパーマンだと言うなら、俺はドナルドダックだ」

と、ありえないたとえで対抗してるわけです。

ただ、この if が前段に来て、後半に then I’m a Dutchman が来るのではなく、

前段の if が無い、or I’m a Dutchman だけのパターンというのもあって、これは要注意です。

例えば、

He’s going to win the Oscar for Best Actor or I’m a Dutchman.
彼はアカデミー賞で主演男優賞をとるね。さもなくば、俺はオランダ人になる。

これで、オスカーをとるのは、間違いないという強い肯定になるわけで、さっきまでの強い否定とは真逆なので要注意です。

「さもなくば」の or がくせ者ですね。

このように、「おへそで茶を沸かす」など、ありえないものをたとえに出して、前言を強く否定したり、肯定したりするパターンは、英語にもれっきとしてあるということが、これでお分かりいただけたでしょうか。

おへそでお茶を沸かさないといいのですが・・・。

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