日本語の「まんまと」ってあまりいい意味で使われない言葉ですよね?
なんかいかにも日本語的な言葉のイメージですが、英語ではどんな言い方をするんでしょうか?
翻訳家さんに聞いてみました。
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英語でなんて言う? この状態編を翻訳家さんが解説
「まんまと」って、英語では何と言えばいいの?
英語の「まんまと」は釣りの映像を浮かべてほしいのです。
例えば、
なんて言うと、
というような意味になります。
また、
となると、
と言えるでしょう。
が釣りのイメージでしてね。
つまり、
hook は「釣り針」で、
line が「釣り糸」、
そして sinker が「おもり」なので、
魚が針や糸やおもりまで丸呑みしてしまうイメージです。
それが、「まんまと」騙される時に、「まるのまま」騙されたり、「まるのままハマる」イメージにつながるわけです。
いかがでしょう?
もっとシンプルに
でも、同じことが言えます。
「まんまと」は、「簡単に」ということですし、「完璧に」なら、completely を使ってもいいでしょう。
fall for とか fall into は何かに落ち込んでしまったイメージから、「(策略などに)はまった」感が出ます。
それに「簡単に」「完全に」で「はまった感」を強調すれば、「まんまと」になる、というわけです。
「まんまと」、分かっていただけたでしょうか?
「まんまと」の「まんま」とは?!
さて、では「まんまと」の「まんま」とは何でしょうね?
まさかご飯の幼児語ではありません。
「まんまと」の元は、たまに「うまうまと罠にはまる」という言い方があるように、「うまうまと」の「うま」は「うまく」の意味で、「うまうまと」がなまって「まんまと」になったようです。
「うまく罠にはまったわい、しめしめ」という感じですね。
あ、ちなみに「しめしめ」。
この「しめしめ」の「しめ」は「占める」の「る」を抜いた部分で、「占有した」=「自分のものにした」ということを強調するために、「しめ」を繰り返した言い方のようです。
まんまと調べるハメに
そもそも、「まんまと」はいいイメージが少なめです。
「まんまと騙される」とか「まんまと引っかかる」とか「まんまと罠にはまる」とか、ほんとにいい意味では使われません。
ただ、「思う壺(つぼ)感」は出ている言葉です。
あ、今、たまたま出てきた「思う壺」という言葉ですが、考えてみたら、おもしろい言い方ですよね。
どういう流れでこんな言い方をするようになったのでしょうか?
なんていう表現を聞いたことがあるかもしれません。
「思う壺」をみてみましょうか。
「思う壺」という言い方にある「壺」。
これは、勝新太郎、通称勝新でおなじみ「座頭市」シリーズとか、「木枯らし紋次郎」とか、昔の町人物の時代劇で、サイコロ賭博をやる賭場(とば)の場面がよく出てきました。
その場面で、壺振り師というサイコロ振りが、サイコロを入れて、振り回しては賽(さい)の目を出したりして、籐や竹でできた壺皿から来た壺…。
あの壺が「思う壺」の壺だそうです。
熟練の壺振り師は、自分の思い通りの賽の目を出すことができたので、「思う壺」という表現ができたそうです。
すごい技ですね、思い通りの目が出せるなんて。
とはいえ、英語だったら thinking pot だろうなんて、短絡してはいけません。
また、賭場のことを、こういう時代劇なんかで、「鉄火場」といってるのを聞いたことがありませんか。
お寿司屋さんで出す鉄火巻というのも、鉄火場でてっとりばやく空腹を満たすために、食べたからそう言うようになったと考えるのも、どうも、これまた短絡のようです。
そもそも鉄火というのは、熱い火にくべた鉄ということですから、マグロの赤身が、焼けた鉄に見えたところから付いた名前という説がどうやら順当のようです。
さらに、鉄火というのは、熱い鉄の連想から、気性の激しい乱暴者のことを言い、鉄火肌とも言いますから、そういう連中の集まる賭場を鉄火場というようになったのでしょう。
「まんまと思う壺にはまる」というのをよく見ると、これは「思う壺」と「壺にはまる」が合体してしまった言い方です。
「壺にはまる」の壺は、賭場の壺皿のことではなく、漢方のほうで人間の体の中には351あると言われるツボのイメージから、「勘所」とか「急所」のことです。
ですから、「ツボにはまる」は、「急所や勘所をはずさず」、ガツンと来て、ピンポーン当たり!という意味なわけです。
なので、「まんま」と「急所をはずさない」というのは、ちょっと意味的におかしいわけです。
英語以上に日本語を知るべき翻訳家が、「まんま」と調べる流れになった今回でした。
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