英語で「真っ赤な嘘」って何と言うか翻訳家さんに聞いてみました

英語で真っ赤な嘘

complete lieって言うそうです。

まさかred lieかなんて思ってなかったよねって翻訳家さんに言われました。

お、思ってないです…。

赤だけじゃなく、いろんな色が出てくるお話でした。

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英語で「真っ赤な嘘」は何と言う?

complete lie

「真っ赤な嘘」というのは「完全な嘘」ということですから、早い話が complete lie でいいわけです。

ただ、嘘と組み合わせるのに、「完全な」の言い方には色々な単語が使えます。

日本語にもあるでしょ、「ひどい嘘」とか、やや堅苦しいけど、「明々白々な嘘」とか。

そういう言い方が英語にもあります。

 

blatant lie

というのも「真っ赤な嘘」に入ります。

もともと、blatant という形容詞は、「見え透いた、わざとらしい、あからさまな」という意味です。

どれも「嘘」と相性がいいというのも変ですが、言葉的に妙に相性がいいですね。

ブレイタントという感じで読みます。

 

flagrant lie

「目に余る、言語道断の」という意味の形容詞flagrantも使えますから、これまた立派に「真っ赤な嘘」です。

 

out-and-out lie

「完全な」なら、out-and-out というのも「徹底的な嘘」なので、これも「真っ赤な嘘」になりますね。

赤じゃなくて白

おもしろい言い方で、「真っ白な」ではないですが、「白い嘘」というのがあります。

コンテクスト的には、「真っ赤な嘘」になりうる可能性があります。

たとえば、

They said my boyfriend was handsome, but I know it was a white lie.

この流れでは、

「あの人たちは、あたしのカレシはハンサムだと言ってくれたけど、それが真っ赤な嘘だというのは自分では分かっていた」

という流れです。

ただ、ちょっと説明するのがむずかしいのですが、ついてきてくださいね。

ハンサムだと言った人たちには悪気がないと思われます。

They ということなんで、彼らか彼女たちかはとりあえず分かりませんが、その人たちの前では言えないけど、「見え透いた、他愛もない嘘だというのは分かっていた」という意味です。

ただし、嘘をつかれた側が「他愛ない」とは思わず、実際は憤慨していれば、この例のように「真っ赤な嘘」になる可能性もあるというわけです。

向こうは「他愛もない」と思っていても、こちら側としては「他愛もない」と思えない場合もあるからです。

真っ赤な嘘が、真っ白な嘘に、手のひらを返したようにダブル・スタンダードになってしまって、かえって混乱したらごめんなさいね。

色の話

英米ではベッドに入る前に、子供たちが祈りを捧げるシーンがよくありますよね。

「天にまします我らの父よ・・・」で始まる神への祈りですが、あれ、ラテン語での始まり方は、Pater noster・・・で始まるので、通称、

paternoster
主の祈りとも主祷文(しゅとうぶん)

ともいいます。

悪意のない純粋な祈りを、

white paternoster

と言いますが、

一方、それとは真逆で、よからぬことを企み、それが成就しますようにという祈りを、

black paternoster

と言ったりもします。

つまり、悪意のないのを white、タチが悪く底意地の悪いのを black と分けたりするように、同じ嘘でも他愛もない嘘を white lie と言う場合があるのです。

ちゃんと寝る前に歯を磨いたかと問われ、「はい、磨きました」的なやつはちょっとした嘘なので、white lie で、罪のない嘘なわけです。

タチの悪い嘘は、black lie と言えます。

すべからく、コンテクスト、つまり文脈によります。

緑とか青とかピンクとか

嫉妬の色は、シェイクスピアが『オセロ』で嫉妬の怪物をgreen-eyed monsterと言ったり、『ヴェニスの商人』でも green-eyed jealousy (緑の目をした嫉妬心)と言ったりしてました。

それ以来、えらく嫉妬していることを

be green with envy
(直訳:嫉妬で緑色になってる)

という言い方が英語では定着しています。

あと、お尻の色が青いという意味で、経験が浅いことも緑で表すところは、日本語と同じですね。

あ、日本では青でしたっけね。

日本語では青と緑をよく混同します。

信号の青は、英語では green light で、blue light ではありませんしね。

あと、ちょっとHなことになると、日本語ではピンク色を使いますが、英語で pink は健康を意味しますよ。

You certainly look in the pink.
「お前、すごく健康そうだな」

と言ったりします。

あ、ちょっと緑に関しては、付け足しておくことが。

嫉妬を緑と結びつけたのはシェイクスピアと書きましたね。

実は、それより2000年も前の古代ギリシャに話はさかのぼらせてください。

西洋では「顔色が悪い」のは green とか pale(青白い)と言われていたようで、ギリシャ人は、病気または嫉妬心を抱くと、体から胆汁が出て、顔色が悪く(緑に)なると言われていたようです。

医学の父ヒポクラテスも四体液説を唱えていましたからね。

「緑」が「嫉妬心」というイメージは英語ばかりでなく、フランス語・ドイツ語・イタリア語などにも同様の表現が存在するようです。

古代ギリシャは西洋の基本ですからねえ。

確かに胆汁を出す胆のうは、緑色をしているそうです。

見たことないんで。

また、英語では怒ったりすると、see red と言いますし、気がふさぐと feel blue と言ったりもします。

真っ赤な嘘から、真っ白な嘘、緑な嫉妬心、怒る赤、憂鬱なブルーと、赤から青まで、まさに色とりどりな表現を見ていると、国際色の豊かさをしみじみと感じます。

世界は国境を越え、どこかでつながっているというのも、真っ赤な嘘とは言えませんね。

あ、そうだ、「真っ赤な嘘」に関するもっとおもしろい表現があったのを思い出しましたので、それについて、さらに深堀りさせてください。


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真っ赤な嘘の深堀り

「真っ赤な嘘」の前に、嘘といえば、ジム・キャリー主演のそのものずばりの『ライアー ライアー』という映画がありました。

1997年の映画です。

最近、また観直したんですが、結構、笑えましたね。

なんせ、ジム・キャリーのおバカぶりが振り切っていて、最高です。

おまけに、映画が終わった後にごていねいにNG集まであって、サービス満点です。

 

ザッとお話の要点を。

主人公のフレッチャーをジム・キャリーが演じているのですが、フレッチャーは離婚専門の弁護士。
嘘に嘘を重ねるのが大得意で、その嘘つき名人ぶりを武器に、どんなに勝てそうにない案件でも勝訴に持ち込むという辣腕弁護士です。
ところが、彼の実生活はそれとは真逆で、妻のオードリーとは実は離婚寸前で、離婚寸前だけに、オードリーには再婚目前の男性がもうすでにいて、しょっちゅう彼女に会いに来て、フレッチャーの前にも堂々と現れ、フレッチャーは目の前に離婚をちらつかされているのです。
ところが、フレッチャーとオードリーとの間にはマックスという五才の息子がいて、フレッチャーにめちゃくちゃなついてるんですね。
オードリーもこの仲良しの二人の様子を見るたびに、離婚に踏み切れないでいます。
さらに、フレッチャーには仕事を優先する悪い癖があって、マックスと遊ぶと約束しておきながら、嘘をついては、すっぽかしてばかりいるんですね。
さすがは嘘の天才、息子にも嘘ばかりついて、仕事を優先させるワーカホリックというわけです。
嘘を最大限に利用した仕事が、弁護士という皮肉も効いてますね。
フレッチャーの上司は女性で、フレッチャーは弁護士事務所に出社すると、その上司の女性にも言い寄られていて、それもあって、出世も間近に迫っています。
そんなある日、息子のマックスが誕生日のお祝いで、5本のロウソクを吹き消す前に願い事をするのですが、一日でいいから、パパが嘘をつきませんようにとお願い事をするんです。
いわゆる、Make a wish ! とはやしたてられて、言われた本人が両手を後ろに回して、人差し指に中指を重ね合わせて(Keep your fingers crossed.)、願をかける定番のやつです。
すると、なんと、困ったことに、というか、喜ばしいことに、ですかね、その願い事がかなってしまい、フレッチャーは完璧に嘘がつけなくなってしまうのです。
デブの同僚に、デブと、ついついほんとのことを言ってしまったりして、あわてて口をおさえる慌てぶりのジム・キャリーがお見事です。
そういうわけで、嘘が誰よりも得意なフレッチャーが、嘘がつけなくなってしまうと、仕事がうまくいきません。
仕事上では、浮気を7回もやった若妻が、旦那から法外な慰謝料をふんだくろうとしてる裁判中なんですが、嘘をつけなくなったフレッチャーは、さあ、困りました。
さっぱり調子が狂わされてしまいます。
普段なら、嘘に嘘を重ねて、裁判がトントン拍子に行くはずが、失敗ばかりしてしまいます。
「いったいどうなってんだ?」と大慌てのフレッチャー。
若妻はいわゆる gold-digger=金鉱堀り、つまり、年寄と金目当ての結婚を狙う女。
おまけに、フレッチャーにも色目を使うとんでもない女なんですが、裁判に勝てそうになくなってしまうのです。

という、この映画は、嘘ばかりついてる男の話で、『ライアー ライアー』という97年のコメディです。

ここまでは、物語の前段、ほんのさわりなので、ご安心ください。

さて、どうなるフレッチャー?!

後は見てのお楽しみです。

ライアー ×2な理由

ライアーというのはliar(嘘つき)をそのままカタカナにしたタイトルで、そこまではいいのですが、ちょっと待ってください。

なぜライアーだけでいいのに、なんで邦題でさえ二回もライアーを繰り返すタイトルになってるのかということです。

実は、このタイトルを見て、ネイティブは「真っ赤な嘘」をイメージするはずです。

それは、ライアーを二回繰り返してるからではなくて、その後に続く言葉を連想しているからなのです。

主に子供の間では、「い~けないんだ、い~けないんだ、嘘ついた、嘘ついた」的な有名な、

“Liar, liar, pants on fire.”

という語呂のいい、はやし言葉があって、「うそつき、うそつき、ケツに火がつき」のような感じの、liar と fire が韻を踏んだ、覚えやすいフレーズがあるんです。

「ランダムハウス英和大辞典」は、 (うそ、うそ、カワウソ)という押韻のはやし言葉だと定義してますが、ちゃんと日本語でも韻を踏んだ訳語をつけててえらいですね。

訳語を考える編集者さん、がんばりました。

まあ、「美味かった(馬勝った)、牛負けた」的な、まあ、しゃれみたいなもんです。

その冒頭部分がライアー、ライアーというわけで、つまり、「真っ赤な嘘」の幼児版と言ってもいいですね。

これにはいろんなバージョンがあるようで、

“Liar, liar, pants on fire,hanging from the telephone wire !”
「うそつき、うそつき、火がついたズボンが、電話線からぶらさがってる」

がまず定番ですね。

日本語にすると、なんのこっちゃになってしまいますが、これまた liar と fire と wire がきれいに韻を踏んでます。

こういうのを日本語でも地口と言います。

地口 - Wikipedia

さっきの「美味かった(馬勝った)、牛負けた」も地口ですが、英語にもこういうのは結構あるんです。

その証拠に、後半部分が

“Your belt’s hanging on the telephone wire!”

と、ズボンが出てきたんでベルトを使ったやつとか、 ピノキオの連想から、

“Your nose is long as a telephone wire!”

というのもあります。

あ、ちなみに、英語でズボンのことは、pants と言うのはご存じですよね。

日本語のパンツは、特にアメリカ英語ではブリーフです。

イギリス英語では、pants はズボン下です。

ややこしいですねえ。

 

Pants on Fireが出てくるサイト

さて、昨今、トランプ大統領で有名になったフェイク・ニュースという言葉がありますね。

日本語で言うと、がせネタですかね。

実は、アメリカには、トランプ氏の発言も含めて、政治家の発言の真偽を確認してランクづけしているファクトチェック団体 のPolitiFact があるんです。

PolitiFact
PolitiFact is a fact-checking website that rates the accuracy of claims by elected officials and others on its Truth-O-Meter.

そのPolitiFact のサイトを見ると、発言の事実関係をチェックしたうえで 、その発言の真偽を6段階にランクづけしています。

そのうち5つは、

①True(正しい)
②Mostly True(おおむね正しい)
③Half True(半分は正しい)
④Mostly False(ほとんど嘘)
⑤False (嘘)

としています。

そして、最後に控えし、堂々6番目に、

⑥Pants on Fire(真っ赤な嘘)

という言葉を使っているのです。

ウィキペディアによれば、輝かしき6番目に輝いた”Pants on Fire”は、「不正確なだけでなく、馬鹿げている」とまでしています。

ポリティファクト - Wikipedia

ただ、
“Liar, liar, pants on fire,hanging from the telephone wire !”

この表現は丸ごと使うには長すぎです。

前半部分の Liar, liar, pants on fire. だけでもまあまあ長いですよね。

pants on fire の固まりぐらいなら、まだ使えそうです。

たとえば、

Trump’s statement was a “pants on fire” lie.

というように使う人はいるでしょうし、

Trump’s statement was pants on fire.

と言う人もいるかもしれません。

ただ、子供っぽい表現だという上記のバックグラウンドだけは押さえておいて、理解しておくことが、どんな場合にも対処できるでしょう。

というわけで、これが長い長い「真っ赤な嘘」の話の、以上が、嘘から出た真(まこと)なのでありました。

みなさんも、発言でお尻に火がつかないようにがんばりましょうね。

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