英語で「金縛り」は何ていうか翻訳家さんに聞いてみました

英語で金縛り

sleep paralysis って言うのだそうです。

「ゴールデンなんとかじゃないんですね」

って言ったら、翻訳家さんの苦々しい失笑を見ることができました。

スポンサーリンク

PICK UP
▼まだまだ聞いた翻訳家さんの面白解説▼
英語でなんて言う? この状態編を翻訳家さんが解説

 

英語で「金縛り」は何と言うの?

sleep paralysis

普通の英語で言うと、sleep paralysis です。

なので、

Last night, I had sleep paralysis, so I couldn’t sleep well.
昨日の夜は金縛りにあったから、よく眠れなかったんだよ

という形で言えますね。

直訳すると、「睡眠麻痺」ということになります。

確かに、日本の医学では「金縛り」ではなく、正式には「睡眠麻痺」と言うそうです。

ただ、元の英語の言い方では paralysis なんて、後半部分にギリシャ語由来の固い言葉を使ってるので、もっと日常的な、普段着の言い方があるんじゃないかと疑ってかかるのが、言葉探偵としてのわたしの基本的な立ち位置です。

もうちょっと深堀したくなります。

お固くない「金縛り」

案の定、ありました、民間伝承的な言い方が。

それが

the night hag

で、

old hag

とも言うようです。

なんだろう、耳慣れない hag って?

気になる hag とは何かというと…

あ、ちなみに、仲のいい人同士が会った時に、相手に抱き着いてハグする時のハグは、

hug

ですからね。

違うのは真ん中の a と u です。

当然のことながら、スペルが一字違うと、まったく別の意味になります。

辞書で hag と引いてみると、日本の英和辞典では「くそばばあ」なんて載ってます。

まあ、そういう言葉もありますけど、いくら何でもなひどい訳なので、merriam-webster の英英を引いてみると、こうありました。

an ugly, slatternly, or evil-looking old woman
醜くて、だらしのない、悪そうな老女

ということです。

二番目の slatternly というのは、最近見慣れない言葉ですが、但し書きで「古語で軽蔑的」とありますが、まあ、意味が分かればいいです。

要するに、日本語の「くそばばあ」のイメージといえばイメージですが、hagでグーグルの画像検索してもらえば、一発で画像がもろもろ出てきますので、ああ、そういう感じねと手っ取り早くイメージがつかんでもらうといいでしょう。

さて、問題の、前に夜がくっついた the night hag ですが、夜寝ている間にその「おっかないおばあさん」が胸あたりののしかかって「金縛り」にあうという民間伝承があるんですね。

まるで魔女のような hag が「よっこらしょ」じゃないですけど、胸の上にのしかかってる感じ。

一度は金縛りにあった人なら、そういう感じも分かりますね。

とにかく、意識ははっきりしてるのに、手足を縛られたような感覚にとらわれますよね。

あー、やだやだ!

スポンサーリンク

金縛りなワケ

日本語の「金縛り」のほうですけど、なんで「金縛り」という言葉になったんでしょうね。

そこが今度は気になります。

実は、「金縛り」というのは、もともと仏教用語から転用された言葉です。

ほら、よくお寺の入り口なんかに金網に囲まれて、仁王立ちになっておっかない顔してる不道明王(ふどうみょうおう)っているじゃないですか。

密教のご本尊である大日如来の化身ということなんですが、その不動妙王が縄みたいなものを持ってましてね。

羂索(けんさく)っていう罠のような仏具なんですが、これでもって敵や賊を身動きできないようにしてこらしめるわけです。

で、この敵や賊ってのが、密教で言うところの煩悩、つまり人間の欲望を退治するというわけです。

これを金縛りの術じゃなかった、「金縛り法」と言うらしいんです。

なので、それから転じて、夜に起こる不思議な睡眠中の硬直感覚を金縛りと言うようになったらしいのですよ。

そうか。

じゃあ、金縛りにあったら、自分の煩悩を退治してくれてるんだから、何も怖がることはない。

これで俺も少しはいやらしくない、まっとうな人間になるんだと考えれば、何も恐れることはない。

ご利益があると考えればいいのではないかと考えてしまいます。

 

金縛りのお国柄

あるアメリカ人が、

「金縛りにあうのは日本人だけじゃないのか?俺は一度もなったことがなくて、意味が分からん」

と言っていたのを思い出します。

金縛りが怖いとか恐ろしいと考えるのは日本人だけなんでしょうか?

日本人が金縛りにあった時は、どんな体験をするんだ?と、そのアメリカ人が聞くもんですから、「なんか地球の底に落ちる感じだよ」と言うと、びっくりしましてね。

アメリカ人も悪夢を見ることはあるわけで、そういう時は決まって「空を舞い上がる」夢だねと言っていました。

それ、悪夢か?

ま、それは置いといて。

なんか怖がりな日本人は、何でもネガティブにとらえ、アメリカ人は何でも前向きにとらえるのかなと思いました。

でも、

I had the night hag( old hag) last night.
昨日の夜、金縛りにあっちゃってさ

というように、そういう表現があること自体、多くのアメリカ人、ヨーロッパ人は怖いと感じてる何よりの証拠ですから、人によってイメージが違うのでしょう。

特に、アフリカン・アメリカンの人は、金縛りにあうと、醜いおばあさんじゃなくて、

shadow man(影男って言うんでしょうかね)

という顔の分からない幽霊みたいなのが出てくるという話もあるそうですから、研究の余地があるかもしれません。

ま、とにかく、「くそばばあ」と「不動明王」という、文化が違うといろんな感じ方が学べるんだなというのが、この金縛りのお話でした。

借金に追われたり、金に困ったりしたら、それは別の「金縛り」ですから、ぜひ煩悩を捨てるようにしてください。

よいこは、不道明王みたいな怖いお兄さんに追われないように気をつけてくださいね。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました