英語で「さすが」ってあるんでしょうか?
ニュアンスが似てる言葉はありそうですが、どんぴしゃなのってあるんでしょうか?
翻訳家さんに聞いてみました。
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▼まだまだ聞いた翻訳家さんの面白解説▼
英語でなんて言う? この状態編を翻訳家さんが解説
英語の「さすが」は?
「さすがだ」は、単純に、これでまかなえるのではないでしょうか。
あまりにシンプルで拍子抜けしてしまいますかね。
要するに、「すごいね」とか「やるじゃん」という意味だからです。
でも、「さすがはイチローだね」というふうに人物を交えて言いたい時がありますよね。
そういう場合は、
とか、
ぐらいでしょうか。
ただ、ちょっと説明的すぎますね。
簡単なフレーズ
もっと簡単なフレーズはないでしょうか?
あります。
「さすがは君だ」という意味なら、ごく単純に、
でいけます。
イチローだったら、
直訳すると、
「それはかなり君だ」→「それはかなり君らしい」
という意味です。
「君らしい」→「さすがは君だ」
ということです。
これなら、短くて覚えやすいのではないでしょうか?
あるいは、
でも、
「これぞ君だ!」→「さすがは君だ!」
ということになります。
これが言えるのなら、イチローの場合でも、シンプルに、
「これぞイチローだな!」でいいわけです。
また、クイズやなぞなぞを出して、答えられた人をほめたたえたい時には、
と言えます。
要するに、
You know very well. とか Very well !(やるな)
ということですね。
「さすが」ということです。
また、「あら、算数で満点取ったの! すごいじゃない!」なんて言う時は、またまた you を主語にして、
あれれ、算数で満点取ったのか! さすがだね
と言えばいいわけです。
この know one’s stuff は、
stuff は「もの」ということですから、「あなたのものを知ってる」。
くどく訳すと「自分の専門分野はよく知ってる」ということで、「抜かりがない」とか「お手のもの」という意味になります。
それを really と do で前から強めてるわけで、「さすがは君だ。抜かりがないね」とか「さすが君(にはお手のもの)だね」の気持ちがこめられています。
You really do のところは、他の言い方として、
You sure know…
というのもあって、「さすがに~はできるね」とか「さすがに~だけはよく知ってるね」の意味をこめられます。
この、
You really do know your stuff.
の know your stuff には、
アメリカで生まれたおもしろい言い方があって、
という言い方もできます。
なんで、「タマネギを知ってる」と、よく知ってることになるのかは分かりませんが、タマネギのかわりにリンゴのパターンで
という言い方もあります。
apples のところには、カラスムギの oats(ここまでは複数扱いですが)とか、果ては(物質名詞扱いの)know your oil というのまであります。
おもしろい表現をするもんですねえ。
農家や油田採掘で生まれた表現かもしれないですね。
「さすが」のニュアンス
さすが、イチロー
一時期、テレビでメジャー・リーグの野球観戦していて、口に出さないまでも、心の中で上のように何度叫んだことでしょう。
この「さすが」というフレーズ。
例えば、
を見て、上のようなセリフを吐くものだと思われます。
つまり、
のニュアンスを含んでいるとは思いませんか?
それに、「さすが」というのは、キーボードで変換されると、「流石」という漢字を当ててるケースがありますね。
英語ではシンプルな表現に着地しますが、ちょっと日本語の「さすが」の源流を少したどってみることにしましょう。
なぜ日本語の「さすが」は「流石」と書くのか?
「流石」という漢字を初めて見た小学生は、よほど物知りの子でないと、「さすが」とは即座に読み下せないでしょう。
実は、この読み方には、あの文豪の夏目漱石さんもからんでくるのです。
そもそも、「さすが」は、奈良時代までは
「然(しか)すがに」
という言葉だったようです。
「然すがに」は「しか・す・がに」と読み、
「しか」は「そのように」という意味の副詞で、
「す」は動詞の終止形で、
「がに」は逆説の接続助詞。
全体で
「そのように・する・ものの」→「そうはいうものの」とか
「さはさりながら」→「そうではあるが」とか
「しかしながら」というような意味に発展していったんだろうと推測できます。
「しかすがに」なんて、まるでカニか鹿の一種のようですが、
最初の「しか」が、
やがて「さはさりながら」の「さ」になり、
「しかすがに」は「さすがに」になっていったようです。
なので、「さすがイチローだね」という言葉遣いは、
「そうはいうものの、やっぱりイチローだね」とか
「なんだかんだ言っても、やっぱりイチローはすごいね」
という思考回路になっているようです。
「さすが」が流れる石になったワケ
その昔、中国の三国志の時代、いわゆる魏呉蜀の「三国時代(184~280年)」に孫楚(そんそ)という政治家というか武将がいて、天才的に頭のいい人だったそうです。
その孫楚が、世の中に嫌気がさして山にこもりたいと願い、友達の王済(おうさい)にこう言ったそうです。
「石に枕して、川の流れで口を漱(すす)ぐような生活をしたい」
と言わないといけないところを、間違えて、
「石に漱(すす)ぎ、流れに枕す」
と言ってしまったんですね。
王済に
「石で口をすすいだり、川の流れを枕にするような、そんなシュールな?ことはできるのか? それはおかしいだろう」
と指摘されると、負けず嫌いの孫楚は
「石で口をすすぐのは歯を磨くためで、流れに枕するのは耳を洗うためだ」
とこじつけがましい言い訳をしたそうです。
それを聞いた王済は、
「こいつはとんでもない屁理屈をこねる奴だけれど、なかなかうまいことを言うな。さすがは孫楚だ」
と大変感心しました。
この故事から、「さすが」を「流石」と書くようになったというのです。
このようにわかりやすい日本語で書くと、かえって分かりにくいので、仮に漢文で書いてみると、
と言わなきゃいけないところを、
と言ってしまったわけですね、漢文的に書くと。
間違った方の最初の二文字を見てくださいね。
何か思い浮かぶでしょ?
そう、この孫楚の屁理屈ぶりが気に入ったのか、夏目漱石はこの「漱石」をペンネームにしたというわけなのです。
この間違えの漱石枕流(そうせきちんりゅう)は、
とも言うようになったので、この名詞部分だけを抜き取ると、あれ、不思議。
「流石」となりますね。
かくして、「さすが」は「流石」と書くようになったというわけなのです。
やれやれ。
なかなか書くと長いこの言葉に歴史ありですね。
このニュアンスを全部英語で汲みとるのは至難の技です。
以上、流れる石のように、頭に入るといいのですが・・・
今回は、さすがに当たる「流石」からのお話でした。
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