英語で「とりあえず」ってなんて言うんでしょうか?
新人さんに仕事の内容を教えるときに、高確率で使う日本語です。
今後、海外の方に仕事の内容を伝えるときに、このニュアンスってどう伝えればいいんでしょう?
翻訳家さんに聞いてみました。
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英語でなんて言う? ビジネス編を翻訳家さんが解説
英語で「とりあえず」 for now
「とりあえず」という日本語で真っ先に頭に浮かぶのは、
でしょうか。
前置詞の for~ には「~の間」という時間的な期間を示す用法がありますから、for now を直訳すると、「今の間は」ということです。
そう、考えてみれば、「とりあえず」というのは「今の間は」という期間限定表現ですよね。
for now は会話でもメールなどの文章でも普通に使えます。
「とりあえず、それでいいよ」なら?
なにか書き物でもして、とりあえずオッケーだせるようなら、、
とりあえずはこれでいいな
とつぶやけばいいわけです。
「とりあえず、これにする」なら?
とりあえず、これにする
レストランで何か注文する時、「とりあえず、これにする」という言葉は浮かびそうですよね。
「これに」に対しては、it が浮かぶとして、「する」は何と言えばいいでしょう?
「する」だから、do かな?
でも、それだと、あなたはそれを「する」ですから、何かを「しない」といけません。
別に何か行動を起こすわけでもないですよね。
「決める」わけですよね。
decide は、「一大決心」なので重すぎます。
だったら、choiceはどうだろうと思うかもしれません。
それでも通じないことはありませんが、普通、オーダーをチョイスする時にはtakeを使うのです。
メニューを指差して、
と言えばいいのです。
デパートなんかで、店員さんに「これはいかがですか?」ときかれて、それに「する」という時もこれは使えます。
というわけで、「とりあえず、これにする」は I take it for now. となります。
場所が違うと…
「とりあえず」と言うのは、メニューの時はいいですが、デパートで「とりあえず」と言ったら、「もっと買ってくれるのか」と、店員さんを勢いづかせることになってしまうかもしれません。
「たくさん買うんだけど、とりあえずこれと…」
の「とりあえず」です。
デパートでは、for now をつけずに、個々に I take it. ぐらいにとどめておいたほうがいいでしょう。
「これもほしい、あれもほしい」というお金持ちの方は、「これも、あれも」という時に使う「これ、あれ」のペア
を使えばいいです。
2点の上にさらにつけ足したかったら、
と延々続ければいいでしょうし、全部指差して、全部買いの太っ腹の人は、
なら全部買いです。
「とりあえず、それをやっといて」は?
とりあえず、これやっといて
になります。
ここで、大事なのは、この just です。
この just はもともと「ただ」という意味です。
「ただ、これをやって」ということですから、日本語的に分かりやすく言うと、ものすごくかすかに、「ああだこうだ言わないで」とか、きつく言うと「四の五の言わないで」のニュアンスが遠くに響いていて、もっと柔らかく言えば、「いいから、やって」の意味の「ただ」です。
なので、上の文章全体は、ちょっと上から目線になるケースもあるかもしれません。
子供さんとか、親しい間柄では「とりあえず」大丈夫です。
無料の「タダ」じゃないですよ!
お間違えなくね。
for the time being
とりあえず、これで間に合うだろ
そういえば、中学の頃にも習いましたね。
「当分の間」っていう、このフレーズ。
友達にお金貸してって言われて、一万円出して、「とりあえず、これで間に合うだろ」的な時は、これももアリです。
ここでも、また出てきましたね。
変な do が。
この do には、前に出てきた do it の目的語の it がありません。
これはどういうことなんでしょう?
このdoは目的語を伴わない自動詞として使われると、「事が足りる」とか「事足りる」という意味にもなるんです。
たとえば、「最近、どうよ?」なんていう時、
という表現は、普通によく見たり、聞いたりしますよね?
この時の do は、「やっていく」とか、もっとこなれた日本語だと「こなす」という意味です。
なので、How are you doing these days? 「最近、調子はどう?」というのは、「あなたは最近、どうやっていってるの?」「どうこなしてるの?」ということになるわけです。
そう、do は他動詞としてだけでなく、自動詞としても使われることがあって、この「事足りる」という意味の do はよく使います。
この
それでいいよ
が使えるようになると、かなりカッコイイです。
かなりこなれた感じの英語になります。
for the moment
それから、「とりあえず」には・・・
というのもあります。
とりあえず、ここでお待ちいただけますか?
気をつけてほしいのは、for a moment との違いです。
文字で見てると、気づきにくいかもしれませんが、the か a の違いです。
a と the の感覚の違いをここでさらりと説明するのはむずかしいのですが、大事なことなので、我慢してついてきてくださいね。
ここで分からなくても、気にしないで、また追々出てきますから、流す感覚で大丈夫です。
for the moment の for もまた、「~の間」ですから、for a moment は「一瞬の間」といっても、現実的には「しばらく」という期間になってしまいます。
日本語でも、「一瞬、待っててね」と言われて、意地悪く実際に時計を見てたら、5分以上だったりするかもしれません。
なので、for a moment だと、結果的に「しばらくの間」という意味になって、「とりあえず」感が薄れてしまいます。
一方、for the momentだと、基本的に the というのは「自分と相手との共通認識の指し示し」ですから、「今、この瞬間」というイメージで、「とりあえず」感がムンムン出ます。
今、あなたと話してる間の「この瞬間」ね、ということです。
つまり、どの一瞬でもいい、あいまいな a moment と違って、the moment というと、「君と共有してる今、この瞬間のあいだだけだよね」という共通認識がぐっと出てくるので、臨場感のある「とりあえず」なのです。
指し示した瞬間というものに網掛けがされるイメージです。
並べてみますね。
とりあえず、ここでお待ちいただけますか?
しばらくここで待っていただけますか?
「a moment = ある一瞬」の方には、いったいどのくらい長い一瞬なんだろうなという予測がついてきてしまいます。
なので、
と言われれば、(この瞬間=「今のところ」ですから→)「とりあえずは、問題はない」ということになります。
ついでに
「今のとこ、いい感じ」という英語のことわざもありますが、主語もないので、ついでに覚えておくと便利です。
「その先は分からないけど・・・」というニュアンスがついてきますが、それも日本語の「とりあえず」の語感にも通じますね。
ことわざなので、そのまま覚えておきましょう。
以上、
「とりあえず」の解説にしては、重くなってしまいましたが、「とりあえず」流し読みしておく感覚で結構です。
anyway
Anyway, I’ll do it.
とりあえず、やってみます
「やってみます」は、I will (I’ll) do it.でいいとして、後ろに、anyway をくっつけると、これがまた「とりあえず」の意味もになります。
普通は、前に anyway,… とやってから、言うのですが、後ろに持ってくると、なお、ソレっぽいです。
anyway というのは、元々の「どんな道でも」を基本に、「どんなやり方でも」という比喩に使われるのですから、「どのみち」とか「とにかく」ということです。
この anyway を同じような anyhow とか anyways という言い方をするネイティブもいるかもしれませんが、どちらもちょっとフォーマルな感じです。
とりあえず「とりあえず」を
というわけで、「とりあえず」の英語をやってみましたが、「とりあえず」のつもりが、こんなに長くなってしまいました。
とにかく、いろいろ使ってみて、やってみてください。
体で覚えるのが、いちばんですから。
「とりあえず」、やってみてください。
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