英語で「はじめまして」ってなんていうのかなんて、中学校の英語の教科書の最初に出てくる話です。
ただ、映画なんかで見ると、老若男女すべてが同じようには使ってない気がします。
翻訳家さんに聞いてみました。
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英語でなんて言う? ビジネス編を翻訳家さんが解説
「はじめまして」って、英語ではどう言えばいいの?
は、まず当たり障りのない入り方ですね。
その後に、
と言えれば、もうそれで十分です。
というのが定型パターンで、
形容詞の場合は、It’s は省くことが往々にありますが、「光栄です」ノリの honor(名誉)とか pleasure(喜び)という名詞を使った場合は、It’s を省かないことが多いようです。
以下にいくつか挙げておきましょう。
pleased
「喜ばしい」の pleased という形容詞の名詞形は pleasure ですから、名詞なので It’s を頭に入れますが、to 以下は入れなくて、シンプルに、
で構いません。
Wonderful
基本的に、初対面の人に「会う」時は、see ではなく、meet を使うので、ご注意を。
知っている人でも、久しぶりに会った時などは、ほぼ初対面扱いで、meet です。
ほら、野球でもバッターに対して、ボールに「ミートしていけ」なんて言うでしょ。
来る球の一球一球が「初対面」なわけで、その球にうまく「出会え」というわけです。
また、to 以下が、いつも to meet you では、紋切型になってしまうので、
あなたとお知り合いになれて
を付け足すと、かっこいいですね。
カジュアル
カジュアルな場面では、
とか、
とか言いますね。
最後の「ワッツアップ」は、what はほとんど発音せず、ザップ?と簡単に言うくだけた言い方もあります。
要注意案件
上に挙げた How’s it going? の親戚で、
というのもありますが、これは女性には絶対使ってはいけない「元気?」の言い方です。
なんでかっていうと、この it は男性の大事な部分のことで、それが「どんな感じで垂れ下がってるか?」っていう意味なんで、ご注意を。
野郎同士の間で、こういうユーモラスな言い方をするわけです。
また、How(‘re) they hangin’? と複数になった場合は、「袋」のほうを意味するなんて、余計なことでしたね。
なんせ、balls は複数なので、they なのです。
How do you do?問題
「はじめまして」の周辺で使われる、
How do you do?
はいいの?という声が聞こえてきそうです。
では、そもそもHow do you do? ってどういうことなんでしょう?
直訳すれば、
「あなたはいかにしているか?」
「あなたはいかになさっているか?」
ということになるでしょうか?
それって、早い話が、
ご機嫌いかが?
と同じことなんじゃないの?という疑問が湧いてきませんか?
中(あた)らずとも遠からず。
ご明察でございます。
ただ、英語の来歴を調べていくと、ちょっとおもしろいことが分かってくるので、ちょっと脱線させてください。
意外にも、お芝居の話
1892年のオスカー・ワイルドの舞台劇で、『ウィンダミア卿夫人の扇』という夫の不倫を探っていく奥様を中心にした19世紀のおもしろい喜劇がありましてね。
お芝居の内容は、ちょっと横に置いておきましょう。
その中で、登場人物の一人が〝How do you do?〟と言うと、主人公のウィンダミア卿夫人が〝How do you do?〟と答えるくだりがあります。
当時、〝How do you do?〟というあいさつの正しい返答は、〝How do you do?〟だったことが分かります。
「はじめまして」と声をかけて、相手が「はじめまして」と答えるのは日本語でも大いに予想がつくことですから、これが「ご機嫌いかが」という意味だったという確証にはなりませんね。
困ったことに「ご機嫌いかが」と聞いて、相手がオウム返しに「(そちらこそ)ご機嫌いかが」と答える可能性は、英語でも大ですからね。
英語と大阪弁の「はじめまして」発想が同じだった
さらに来歴をさかのぼっていくと、もっとおもしろいことが分かります。
問題は、How do you do? の二度目の do なのです。
調べていくと、この do は、14世紀までは prosper とか thrive を意味することもあったことが分かります。
繁栄する
繁栄する 勢いよく育つ
繁栄してますか?
育ってますか?
ってことになります。
ちなみに、
イギリスの庭師などは、育ちのいい花とか木とかを good doer と言うことがあるそうです。
doer は「doをする人か物と」いうことですよね。
「よくする木」じゃおかしいので、
というような発想でしょう。
物や植物ではなく、人のことを言う場合、「繁栄する」は、くだいていえば「儲かる」ということですよね。
つまり、How do you do? は、大阪弁で初対面の人に発する「もうかりまっか?」と発想が同じだということです。
英語の「はじめまして」は、「もうかりまっか?」と言ってるのと同じと考えてもよく、「植物のように元気に育ってますか?」は、「健康でいらっしゃいますか?」と同義語と考えてもいいわけです。
言い換えれば、英語の〝How do you do?〟は、〝How are you?〟と同じだったということなのです。
それが、16世紀から18世紀にかけて、二番目の do がだんだん退化していって、ほとんど発音されず、
果ては、
などのバリエーションを生んでいきました。
西部劇の映画やテレビで、カウボーイが「よお」とか「おっす」、または英語の Hi の感覚で、
なんて言うのは時折耳にします。
長い歴史の流れにもまれ、How do you do? は、結局、 Howdy? という短縮形にまで「進化(?)」してしまいました。
Howdy? は、How do you do? のなれの果てだったというわけです。
How are you? だって、しまいには、口語では 、
に短縮されてしまうのですから、短縮好きは日本人だけじゃないんですね。
丁寧ではあります
How do you do? という表現は、もはや、「はじめまして」としては、古臭い言い方と言われます。
古臭い言い方であっても、丁寧な言い方であることに変わりはないです。
まだ「はじめまして」としてのフォーマルな不動の地位にあるという意見もあるようで、その辺は現場でお確かめください。
以上、今まで当たり前のように見過ごしてきた「はじめまして」のフレーズですが、案外、深い歴史があったことがこれでお分かりいただけたでしょうか?
こんな話が、「はじめまして」への「はじめまして」になるといいのですが…
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